通信会社の事務員時代★居場所がなかった見つからなかった

通信会社で事務員をしていた。中途採用の契約社員だった。2ヶ月ほど先に入社した先輩Hさんが同じグループにいた。

Hさんは私と同年代で若い時はSEをしていたらしい。とにかく無口でほとんど声を聞いたことがない。
エクセルのVBAというプログラミングを使いこなしていた。
その通信会社は、外から見るとIT技術を持っていそうに思ったが、中身はほぼ公務員。文科系の対人折衝能力が重視される社風だった。
中でも総務や人事系事務員を集めた部門なのでエクセルは単に表の形をしたソフトといった認識だった。

HさんはVBAを駆使して様々な仕事をバッサバッサ片付けていた。
中でもアンケート集計は得意分野だった。様々な社員のアンケートをいろんな切り口で集計してグラフにするのが早いのだ。集計というエクセル向きの仕事だった事もあるが、数百人から数千人規模のアンケートで社員の職位やら年齢、身分などに分類して綺麗に処理していた。

他には、社員コードから社内セミナー出席名簿を作って、受付画面を作る。それまでは紙に印刷して受付嬢が目で探して手でチェックしていた。一気に出席者がコードを入力する受付フォーマットを作って省力化にインパクトがあった。

管理職全員からもらった項目ごとのコメントをエクセルで管理して、一気にパワーポイントフォーマット上に書き込んで、数百ページの社内ウェブサイトを公開したのも驚いた。

ちなみにその通信会社は社内ウェブサイトは完全に手作りのHTMLだった。出来る社員がいればHTMLだが、一般的にはPDFを作って貼っておくだけのページがほとんどだった。
ブログ風フォーマットであるワードプレスなど名前すら知られていなかった。

私は本当に公務員お役所の仕事も長かったが、その通信会社のお役所仕事は本物以上にお役所風だった。
基本的に社内事務をする部門だが、機械が打ち出したような冷たいキチッとした文書フォーマットが絶対に必要とされた。文字の大きさ、改行を人間がやっているのに機械風にするのだ。

大量反復は機械的にやるのに向いているが、少人数個別的な書類にも機械的な雰囲気が求められていた。私は個別的な書類を扱う仕事を担当してずいぶん苦労した。一つ一つ書類を作るのでどうしても人間臭くなってしまうのだ。馴れない人間がパソコンを使っているという雰囲気がにじみ出てしまうのだ。

HさんのようにVBAを使う能力もなく、個別処理もたどたどしい私はすぐに行き詰まって、居場所はなかった。

似たような不器用社員と愚痴を話していたら、話し相手がうつ状態になって退職したこともあった。

結局私は一年間置いてもらうだけで、契約満了。事務員としてやっていく自信は砕けて、改めて理系職を目指すことになるのだが、それは、別のお話にします。