映画ペンタゴンペーパーの意味

スピルバーグ監督で主演がトム・ハンクスとメリル・ストリープという豪華キャスト。
1971年のベトナム戦争末期にアメリカは南ベトナム支援や反共主義よりも単にアメリカ敗北の不名誉を避けるためだけに戦争を拡大して泥沼化していました。
アメリカの若者が16000キロメートルも離れたアジアに派兵されてジャングルで死んでいく現実。ベトナム戦争がアメリカ不利で戦況は悪化していたのにそれを視察したアメリカ権力者および大統領は、事実を隠して無駄な戦争を続けていたのです。

それを公文書として記録させた政治家も、戦争中に事実を公表してはアメリカの不利益、大統領の失政と捉えられると感じて最高機密として公表しません。


そこに、現代でいえばスノーデンのような情報リーク者が現れて公文書を持ち出しコピーして保管するという勇気ある行動に出ます。


映画は47年前の新聞社の様子と絡めて映し出しています。ワシントンの地方紙だったポスト新聞社とニューヨークタイムズ新聞社の競争によってベトナム戦争の戦況悪化を隠した事実が暴かれます。


スピルバーグはトランプ大統領就任のあと45日で制作を発表して短時間で完成、公開されています。


トランプ大統領が報道陣をフェイクニュースと呼んで対立している様子が映画と重なり合います。

アメリカでは大統領イコール国ではなく、国民が国であるという意識が強く描かれています。

国家の安全、大統領の権威を損なう記事でも司法は報道の自由を公正に認めています。

また女性経営者役でメリル・ストリープが、弱弱しく書類を読みスピーチの緊張してファッション記事を好む女性のイメージや女性に政治の話は似合わないとする男性社会から、次第にそして軽々とペンタゴンペーパーの新聞掲載を決意するさまは痛快です。

政治家と新聞社の男社会とヒラリー・クリントンさんのような女性大統領候補の時代までの歴史を感じました。

国家機密を新聞掲載する司法判断後にニューヨークタイムズ社は男性の記者に質問されているのに、ポストのメリル・ストリープは味方する女性たちに囲まれます。

報道をホワイトハウス出入り禁止にするニクソン大統領がウォーターゲート事件で退陣したようにトランプ大統領も退陣してしまえという意見を感じました。

トランプ大統領のフェイスブックを利用した世論操作が大問題になるアメリカのバランス感覚に期待しています。

最後、ノーラ エフロンに捧ぐで締めくくられます。彼女は、カール バーンスタインというポスト紙の伝説記者の奥さん。スピルバーグ監督とも親交のある脚本家。