岸田秀

早稲田の先輩の思想の根本的な部分を代弁してくれる痛快書。
人間国家組織の行動が理詰めではなく歴史的民族的幻想によって衝き動かされているという指摘は天才の啓示のように真実をついている。

現代のトランプ政権との距離感、カジノ法案、水災害と官邸の宴。どれも批判する側を白けて見る右傾化した若者たち。
上の世代の反戦と反省、若い右傾化の流れの間に位置する中年のオイラたちが読むと面白く読める。
左右のバランス感覚を取り戻す意味で大人が読むと楽しめると思う。

以下、引用。

戦争、薬害エイズ事件などで、官僚はなぜ国家や国民の利益に反する行動をしたのか、アメリカは何ゆえに日本への原爆投下を謝罪しないのか、どうして日本人はアジア人の中で英語がいちばん下手なのか…歴史的事件の背景にあるものを精神分析の手法で考察。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
岸田/秀
精神分析者、エッセイスト。和光大学名誉教授。1933年香川県生まれ。早稲田大学文学部心理学専修卒。『ものぐさ精神分析 正・続』のなかで、人間は本能の壊れた動物であり、「幻想」や「物語」に従って行動しているにすぎない、とする唯幻論を展開、注目を浴びる。